つくば・神岡間長基線ニュートリノ振動実験(K2K)

実験開始!!
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 謎の素粒子ニュートリノに質量はあるのか? 現在、素粒子物理学では、物質の 構成要素としての素粒子は、クォ−クとレプトンであり、ニュ−トリノは質量の無 い、電気的にも中性な粒子として、次の3つの種類に分けられています。それぞれ、 電子、ミュ−粒子、タウ粒子と対をなして、電子ニュ−トリノ、ミュ−オンニュ− トリノ、タウニュ−トリノと呼ばれています。ニュ−トリノの質量の有無について、 今日まで、いろいろな手段で、多数の実験が行われましたが、明確な答えが得られ ていません。もし、質量がわずかでもあれば、3つの種類のニュ−トリノは、相互 に転換する(振動する)可能性があります。この可能性を追究するため、高エネル ギー加速器研究機構(KEK)では、東大宇宙線研究所と協力して、世界にさきが けて研究プロジェクトをスタートさせました。それが、長基線ニュートリノ振動実 験(K2K)です。K2Kでは、KEKの陽子加速器を用いて人工的にミューオン ニュートリノビームを発生させ、250キロメートル離れた検出器スーパーカミオ カンデに打ち込みます。ニュートリノビームの発生時の強度やエネルギー分布を正 確に測定する為、機構内に前置検出器を設置します。この測定結果とスーパーカミ オカンデの観測を比較して、もしミューオンニュートリノが減っていたり、電子ニ ュートリノが現れたりしていたならば、ニュートリノ振動の動かぬ証拠となります。

 
長基線ニュートリノ振動実験(K2K)

 KEKでは、12GeV陽子シンクロトロン(加速器)からの陽子ビ−ムを、タ−ゲッ ト物質(アルミニウム)に当て、大量に発生するパイ中間子の方向をなるべく前方へ 揃え(電磁ホ−ン)、200メ−トルの崩壊パイプ中を通過させます。この中で、パ イ中間子は、ミュ−粒子とニュートリノに崩壊します。この結果生成されたュートリ ノのみがダンプ(放射線シ−ルド)を通過して、前置検出器で一部は観測されますが ほとんどが地中に打ち込まれます。前置検出器を通過したニュ−トリノは1ミリ秒後 に神岡に到達し、その中の極く一部がスーパーカミオカンデで観測されます。

 前置検出器は、1000トンの水チェレンコフ検出器(ベビーカ ミオカンデ)ファイン・グレイン検出器からなります。 この測定器は、加速器で作られたニュートリノビームの空間的な分布や成分を精密に 測定することを目的としています。発生地点でのニュートリノビームの特徴を十分押 さえることで、信頼性の高いニュートリノ振動の測定を行なうことができるのです。

 

前置検出器

 


本実験の現状(1998年7月)

現在、K2Kでは、1999年1月27日の実験開始に向けて順調に準備が行なわれ ています。本実験の為に、新たにニュートリノビームライン及び実験ホールが新設さ れました。

ニュートリノビームライン ('98.02)
250キロメートル離れた神岡にニュートリノを送るために、ビームラインは北カ ウンターホールから約90度曲げられ、また、地球の円弧に合わせるために、水平 より、約1度下向きにビ−ムを打ち込みます。GPSを用いた正確な測量が行なわ れ、大量のニュートリノをスーパーカミオカンデに打ち出すことが出来ます。
電磁ホーン ('97.01)
電磁ホーンは、ニュートリノビームの方向をスーパーカミオカンデに向ける、ビーム 収束装置です。陽子ビーム標的が内部に設置されています。現在インストール待ちの 状態です。
ビームラインの電磁石('98.07)
ビームラインに設置される電磁石の敷設が進んでいます。
実験ホール ('98.05)
陽子ビームの標的から300メートル離れた所に、直径25メートル深さ15メート ルの巨大な実験室が作られました。地下に検出器を設置するのは、地球が丸い為ここ KEKから眺めたスーパーカミオカンデは約1度下方に位置するからです。
ミューオンチェンバーの鉄の設置('98.06)
ミューオンニュートリノのエネルギーを測定する為のミューオンチェンバーの鉄の設 置が完了しました。
鉛ガラスの設置 ('98.06)
ニュートリノビームに含まれる電子ニュートリノの比率を測定する為の装置、鉛ガラ スの設置が行なわれました。
SCIFIシートの製作 ('98.06)
ニュートリノの反応位置を測定する為のシンチレーティングファイバーシートの製作 が進んでいます。
1000トン水チェレンコフ検出器(ベビーカミオカンデ)の設置('98.07)
スーパーカミオカンデと同じタイプの検出器を用いる事で、ニュートリノ反応の比較 を行ないます。 1000トンのベビーカミオカンデが、無事実験ホールに設置されま した。この作業は、多くの共同実験者が見守る中、1日がかりで行なわれました。

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E-mail: www@neutrino.kek.jp